社員の幸せを露骨に追求する会社

経営者の方なら、皆さんご存知かもしれませんが今日は伊那食品工業の塚越会長のインタビューから、経営の本質を考えてみたいと思います。

(元のインタビュー記事は日経ビジネスオンラインのこちらの記事です。)

インタビューの中でこういった内容でお話しをされています。

社是は「いい会社をつくりましょう」

原料調達のために海外を走り回った1970年代

「固まらない寒天」など斬新な商品を次々と開発

社員の幸せを通して社会に貢献すること

「企業はもっと露骨に人の幸せを考えるべき」

「何かよくなった」。そう感じることが会社の成長

「性善説の経営」が管理コストを下げる

「通勤時、右折禁止」が意味すること

「払うべきものを払い、使うべきものに使う」

本社の敷地に無料の水汲み場がある会社

「成長は善ではない」

低成長のためにスーパーの全国展開を拒否

身の丈に合った成長率を考える――それが経営者の役割

 

このインタビューの内容で私が注目したポイントは、経営理念が一貫している点です。

『いい会社を作りましょう』という分かりやすい一言が、社員の行動規範のすべてに現れています。

私は常々、社員の報酬制度に関して成果報酬と年功序列式とどちらがベストな考え方なのかを考えてきました。

 

「どんなに儲けている会社があったって、従業員が貧しくて、社会に失業者が溢れていれば、それには何の意味もない。

世界一売る小売りが米国にあるけど、従業員の10%近くが生活保護を受けているという。

それで『エブリデイロープライス』。いったい何なのって思わないかい」

「会社の目的は売上高や利益を伸ばすことではなく、社員を幸せにしたり、世の中をよくしたりすること。

売上高や利益はそのための手段でしかない。商品やサービスを通して社会に貢献していくのはもちろん重要だよ。

でも、それは企業の役割の1つであって、すべてではない。会社はもっと露骨に人の幸せを考えなきゃいけない」

「そう考えれば、何も悩むことはない。会社はみんなが幸せになるためにある。それでいいじゃないの。

経営者はもっと、会社のあるべき姿を考えるべきじゃないか」

 

新しい技術や商品を開発したとしても、その人1人が生み出したものではない。

成果を出す過程では、同僚や取引先など様々な人の力を借りている。会社の経営資源や歴史が生み出した

信用も寄与しているはずだろう。であるならば、成果を1人の従業員やチームに帰することは公平ではない。

 個々のスタープレーヤーが活躍するのは結構なこと。だが、組織が大きな力を発揮するのはメンバーが

一丸となって頑張る時。成果主義を導入すると、この組織の力を削いでしまう。

 そして、従業員の立場でものを考えた場合、最もカネが必要になるのは子供の教育費や住宅ローンなどの出費がかさむ40~50代。

一番カネが必要な時に給料が増える。それが社員にとって一番幸せなのではないか――。塚越会長はこう考える。

 

能力に応じた報酬制度の場合一番問題になるのが、誰が誰のどんな能力を見るのか、と言う点です。

営業などは一番簡単なのが、数字を見ることですが、果たして数字だけ見ていることが正しいのかという問題です。

塚越会長がおっしゃるように、組織力が最大になるのは、メンバーが一丸となって頑張る時です。

この組織力を最大にすることが、私のミッションだとも思っていますが、経営者の考え方次第のところが大きいのがこの部分です。

高度成長時代に日本が躍進出来たのは、この日本式経営方法があったからですが、今の時代の間違った能力至上主義が

日本自体の活力を無くしていることに気づいているかどうかが、これからの経営に必要なポイントではないでしょうか?

年功賃金が正しいのかそれを取り入れるのかは、各経営者の考え方次第です。

能力給制度と年功賃金の良いところを取り入れようと考えるなら、労働分配率を固定することも一つの手段だと思います。

 

伊那食品工業の新入社員研修は制度やスキルの前に、人としての生き方や考え方などを教えていく。

この日のテーマは「学び方」。二宮尊徳の遺訓を引き合いに出し、学ぶことの意味を新入社員に話していた。

 

この記述は、ネッツトヨタ南国の横田相談役が、『人柄』の良い人を採用するという話と同じだと思います。

人柄の良い人を採用することが困難なら、新入社員研修で人としてのまた社会人としての心構えを教え込む、と言うのも重要ではないでしょうか?

翁曰く、

人、生まれて学ばざれば、生まれざると同じ。

学んで道を知らざれば、学ばざると同じ。

知って行うことを能はざれば、知らざると同じ。

故に、人たるもの、必ず学ばざるべからず。

学をなすもの、必ず道を知らざるべからず。

道を知るもの、必ず行はざわるべからず。

 

この新入社員研修の初日、塚越会長は必ず、「100年カレンダー」の前に連れていく。

100年の未来が書かれているカレンダーの前に立たせ、“自分の命日”を入れさせるのだ。

時間は誰にでも等しく与えられている。そして、どんな人間にも死が訪れる。残された時間をどう使うか。

その意味を考えさせるためだ。

「彼らだってあと50回くらいしか花見はできない。それが分かれば、真剣に桜を見るだろう。

限りある時間を理解すれば、1日1日を大切に生きる。時の流れははかない。そのはかなさを考えてほしい」と塚越会長は言う。

こういった研修は2週間続く。終わる頃には、新入社員はがらっと変わっているという。

 「立派な社会人であれ」。塚越会長は事あるごとに社員に語る。立派な社会人とは、人に迷惑をかけない人間のこと。

会長自身、会社や社員、取引先に迷惑をかけないように生きてきた。その教えが隅々まで浸透しているからだろうか。

同社の社員は「立派な社会人」を実践している。

 

伊那食品工業さんには、トヨタ自動車を始め多くの大企業が視察に訪れるそうです。

身の丈に合った成長率を考える――それが経営者の役割

この部分も単に数字だけを追いかける経営ではなく、何を重視して経営していくのかと言う理念が現れていると思います。

成長することが重要なのではなく、身の丈に合った成長を目指す。この考え方はとても深いのではないでしょうか。

急激な成長はどこかにしわ寄せがくることが考えられます。 実際に塚越会長も一度失敗をされているようですが、

年輪経営という考え方で、いい会社を作るという基本的な考え方のもとに自社を成長させていくと言うスタンスは、非常に優れていると思います。

今回のインタビュー記事は大企業のみならず、多くの中小企業経営者に参考になることが多いと思います。

 

追記

首相、年功序列賃金見直し検討 政労使会議で表明という記事が9/30に出ていました。

 政府は29日、政府と経済界、労働団体の代表らを集めた「政労使会議」を再開した。安倍晋三首相は、経済成長を維持するには

「労働生産性の向上を図り、企業収益を拡大させ、賃金上昇や雇用拡大につなげることが重要だ」と指摘。

年齢や勤続年数に応じて給料が上がる「年功序列型賃金」の見直しなどの労働改革を進め、

子育て世代を中心に賃金の底上げが必要との考えを示した。

 経団連の榊原定征会長は会合後の記者会見で、年功賃金見直しは「大企業や中小も含めて志向していくべきだ」と賛成した。

一方、連合の古賀伸明会長は「そう簡単に変えることはできない」と反発。今後の議論は難航しそうだ。


現在さまざまなところで、年功序列型賃金への見直しが叫ばれていますが、さてそんなに簡単に変わるものでしょうか?

中小企業などは仕組みを変えるのもトップの一言でいくらでも変えられそうですが、大企業ともなると株主の意向もありますし。

ただし、これはあくまでも予測でしかありませんが、これから成長していく企業は給与制度で分かってくるかもしれません。

社員が教えてほしいのは、まず第一にどうすれば自分の給与を上げることが出来るのか、ということです。

業績がアップすれば、全員上がるのか? 自分がどの能力を磨けば、どれだけ給料が上がるのか、です。

そこらへんを明確にすることが、働きやすい会社にするための第一歩ではないでしょうか。