経営をオープンにすることの意味(オープンブックマネジメント)

 元気な会社にはいくつか共通点がありますが、そのひとつは従業員が自発的に動く組織であると言う点です。

今、経営をガラス張りにするオープンブックマネジメントを取り入れる企業が徐々に増えています。

オープンブック・マネジメントを世に紹介したのは、マネジメント・ライターのジョン・ケイス氏です。

彼は、米国のベンチャー経営者に読まれている経営情報誌『Inc.』の紙上で、オープンブックマネジメントこそがこれからの企業変革のモデルである、と

提唱しました。

オープンブックマネジメントの定義は、「企業の財務諸表や経営数値を社員に開示し、経営の透明性を高めることで

社員のモラルを高めようとする経営手法」となります。

 

「うちの社員は危機感がなくって困る。」

「うちの社員は会議をしても意見を言わない。当事者意識がなくて困る。」

多くの中小企業経営者から聞かされてきた言葉ですが、こういった経営者とスタッフの温度差には理由があります。

それは情報量の差です。多くの中小企業の社員にとって、自社の経営の状況は想像でしかわかりません。

せいぜいわかるのは売上くらいですから、どんなに社長が口を酸っぱくして危機感をあおっても、情報の少ない社員に経営者と同じ感覚を

期待するのは無理です。逆に、多くの中小企業では経営者に対する大きな勘ちがいがまかり通っています。

『どうせ、売り上げが伸びても、社長が儲かるだけ。』

こういった勘ちがいは現実の話です。

経営者がどれだけ従業員の事を考えて、お金の工面をして自分の給料をゼロにしても頑張っていても、

どこの企業でも勘ちがいをしているスタッフは必ずいるものです。

 

経営をオープンにすることで、逆に優秀な社員に辞められてしまうとか、経営者の報酬が高すぎると思われるのでは、など経営者の悩みはありますが、

企業の業績は社長一人がどんなに獅子奮迅の働きをしても高が知れています。組織力を最大限に発揮することが重要です。

 

オープンブック・マネジメント導入のポイントは、何といっても徹底した情報公開です。ただし業績をオープンにするだけでは効果は得られません。

オープンブックマネジメントのカギは、『情報』と『インセンティブ』にあると言われています。

ジョン・ケイスはオープンブックマネジメント(以下OBM)の導入のための4原則を上げています。

■情報共有:情報を公開する

 従業員に対して、彼らが仕事を進めるために必要な情報だけではなく、部門や会社全体で何が起こっているか、

また各人の仕事が会社全体の活動にどうつながっているか、企業全体の経営状況はどうなっているのか、ともかくすべての情報をありのまま公開する。

■ビジネス・リテラシー研修:情報の意味を理解できるようにする

  公開した情報の意味が、従業員全員に正確に理解されるように、財務諸表の読み方を含めた、従業員のビジネス・リテラシーを高めていく研修を実施する。

■エンパワーメント:従業員への権限委譲を進める

  情報共有とビジネス・リテラシーの向上によって、動機づけられた従業員が、思い切りパワーを発揮できるように、

権限委譲を進めるとともに、個々人の決定を尊重し、その実施を支援する仕組みをつくっていく。

■成功報酬:誰にでも見える形での成果配分制度を導入する

 従業員の努力や工夫によって実現した成果は、誰の目にも納得できるようなかたちで、従業員に公平に配分される報酬体系を導入する。


OBMは、単に情報を共有して成果報酬制度を導入するだけの仕組みではありません。

経営や労働に対する思想の転換であり、新しい従業員観、経営者観の構築です。

OBMを導入する前には、それなりにきちんと準備をして望みましょう。何処の企業でも3つの問題にぶつかります。

ただし、その問題を乗り越えた先には、大きな変化を感じられるでしょう。

 

○いちいち指示しなくてもこちらの意図をくみ取って先に進めてくれるようになったので経営ストレスが減った。

○売上は伸びているのに資金繰りが苦しい事を1人で悩んでいたが、社員が粗利を重視してくれるようになって楽になった。

○現場でバタバタすることがなくなって、経営に専念できるようになった。

○経営方針を明確にすることで辞めて行く社員が出たが、逆に経営方針にマッチした社員が集まるようになった。

○会社の雰囲気が、閉そく感がなくなり明るくなった。

 

経営者として一人で悩んでいるよりも、考え方を転換して経営ストレスを解消する方向へ進んでみてはいかがでしょうか。

メガネ21や㈱武蔵野など、元気のいい中小企業は思い切った経営の見える化と報酬制度の見える化をしています。

小規模事業者でも、取り入れることで赤字企業からの脱却に成功しているところがたくさんあります。

従業員が知りたいことは、この2点と言ってもいいでしょう。

1. 自社が本当はどういう経営状態なのか?

2. どうやったら会社に貢献して自分の給料を上げることができるか?

従業員に経営者視点で働いてもらうためには、経営者と従業員との情報格差をなくすことから始めなければならないのではないでしょうか?