新規事業がうまくいかない理由 2 デザイン・シンキング

 前回、新規事業がうまくいかない理由に関して少し考えてみました。以前、デロイトトーマツコンサルティングが発表した日本企業のイノベーション実態調査では、日本企業の新規事業の売上高比率が平均6.6%で、米国や中国の12%と大きくかけ離れていました。新しいモノを生み出せなくなっているという調査結果ですね。失われた20年などとも言われますが、これからは価値創造イノベーションが求められるでしょう。

  企業内において新規事業がうまくいかない、失敗する原因はいろいろあります。

前回は、ニーズありきで『ヒト』『モノ』『カネ』以外に『高度な判断力』と『モチベーション』が重要だと言うお話をしました。

それ以外にもどういったことが考えられるか考察してみます。

 

新規事業の目的・基準が明確になっていない

 案外、新規事業を始める目的自体が明確になっていない場合が多く見受けられます。また、成功・失敗の判断基準がきちんと定まっていない場合がほとんどです。(抽象的な漠然とした目的が多い)

ビジネスプランはあくまでも仮説の上に成り立ちます。絶対に成功する、とは言えません。

新規事業は、仮説と検証を繰り返し状況に応じてプランを微調整していく作業の連続です。成功させるためには、最終的なビジョンが明確になっている必要があり、そのビジョン達成のためにどうするかを考えて行くことが重要です。本来の企業経営と同じなのです。既存事業を大きくしていく場合は先輩のアドバイスなどを参考にできますが、新規事業の場合はアドバイスできる人材自体がいないはずです。そのために、何が一番重要な事なのかを見失いがちです。

目的が明確になっていなければ、出口のない迷路にはまり込んでしまうことになります。

VCから事業立ち上げに詳しい人材を受け入れてアドバイスしてもらう方法もありますが、事業立ち上げに詳しいと言ってもさまざまです。オールラウンドに事業を見渡せる人材というのは、数えるほどしかいないので探すのも困難でしょう。

 

新規事業はサンクコストとの闘い

 新規事業を始めてみたが、思ったようにプランが進まず売上が伸びない。こんな話はよくあることです。

新規事業はサンクコストとの闘いです。縮小・撤退は非常に難しい判断になりますが、事業計画の段階で考えておくことが重要です。失敗した時の事を考えておくというのは、ネガティブに聞こえるかもしれません。ただ、熱に浮かれたような状態では、まともな事業計画は作れません。常に冷静に事業内容を見て、サンクコストをきちんと計算に入れておける人材でなければ、新規事業を成功へ導く事は難しいでしょう。その際に重要なのは、本業への影響度です。本業に影響してしまうような、一か八か的な新規事業は博打でしかありません。あくまでもビジネスベースで物事を考える必要があります。

 

 いざとなったら止める判断が出来なければ、新規事業自体を始めるべきではないでしょう。

私自身は常に費用対効果を考えていますが、いかに損失を出さずにシナジー効果を得ることが出来るかを重視して考えるようにしています。

 

アイディアとビジネスプラン

 社内公募は非常に大事だと考えています。ただ最初のうちは色々なアイディアが出てきますが、そのうち形だけになってしまいます。何故なら、アイディアレベルで終わりになる場合が多く、ビジネスプランにまで練り上げることが出来ないからです。

ビジネスプランにまで練り上げることは、相当の知識と経験とエネルギーが必要になります。簡単に言うと、専門的知識より総合的知識が必要で、技術者やマーケッターとして優秀でも、すべてを俯瞰して見ることのできる総合的な知識を持っているわけではありません。

 

また更に重要なのはマインドです。

考えることは非常にエネルギーを使います。はっきり言って24時間新規事業のことを考えていなければ、まともなビジネスプランなど作ることはできません。

現状を打破したい、変革を起こしたい、社会の役に立ちたい、など熱い思いがなければ、続けることはできません。

大企業で生存欲求が満たされている社員には、それだけのマインドを維持することが出来ないでしょうし、現状維持バイアスが働いている状態では、新しい事を考えると言う作業自体ができません。

 

 これはコンサルタントの世界でも同じです。財務に長けたコンサルタント、マーケティングに長けたコンサルタントなど、専門知識がいくら豊富でも、新規事業に向いているわけではありません。要はクライアントと同レベルのマインドになれて、経験と全体を見渡せる知識が必要です。

企業経営において、企業全体を見ることのできる人材は経営者しかいません。なので本来新規事業の中心は経営者でなければ務まらないわけです。

 

美しいビジネスプラン

 私自身は、ビジネスデザイナーという肩書きでコンサルティングを行っています。

自身で撮影からデザインまでできる知識と経験、ディレクションの経験と知識を持っています。

そういった背景から、ビジネスにおいても常にデザインありきで物事を考えます。

要は、『美しい』かどうかです。 

ビジネスプランも同じだと思います。美しいビジネスプランは考え尽くされています。

30分で作れるようなビジネスプランは、ほとんどの場合穴だらけでアイディアレベルでしかありません。

アーティストの生みの苦しみと同じように、ビジネスプランもそれを美しいものに創り上げて行くためには、これ以上考えられないというほど考え尽くす必要があります。

 

 スタートアップした経営者があとから良く思うことに、『スタートアップ前にもっと考えておけば良かった。』という言葉があると、以前ITニュースで読みました。

私も同感です。頭から湯気が出るくらい何度も見直し、徹底的に考えておくことがビジネスプランを成功に導く要因ではないかと思います。だからと言って必ず成功するとは言えませんが、多くの場合頭の痛いサンクコストによる影響を最小限にすることが出来るのではないでしょうか。

また、コンティンジェンシープラン(シャドープラン)まで考えておく必要もあるでしょう。

 

デザイン・シンキングという考え方

 私自身、常に『デザインすること=わかりやすく伝えること』ということを念頭に置いてビジネスの現場に立っています。

今、新しい商品やサービスの創造を狙って、ソニーやヤフー、日立製作所がデザイン・シンキングという手法に注目しています。

(詳しい記事はこちらを参考にして下さい。)

簡単に言うと、優秀なデザイナーやクリエイティブな経営者の思考法をまねることで新しい発想を生み出す手法ですが、大手コンサルタント会社なども注目しているようです。

 

 コアになる考え方は、技術や市場中心のやり方ではなく、人間を基点とするアプローチのようですが、私自身クリエイティブ系が得意なので、考え方の根本にあるのが同じ思考法です。

(新規事業の場合、ペーパーコンテンツやデジタルコンテンツのデザイン等は自分でラフを作成するところから始まります。)

記事を読む限り、デザインやプロトタイプからのアプローチは非常に有効だと思います。

プレゼンツールなどその差が極端に現れますが、デザイン一つでわかりやすさは大きく変わってきます。

 

 私自身はデザイン・シンキングとは、クリエイティブ・シンキング<ロジカル・シンキング>クリエイティブシンキング<ロジカル>クリエイティブ~と繰り返すことだと考えています。クリエイティブ・シンキングで徹底的にアイディアを抽出し、ロジカル・シンキングで徹底的にそぎ落としていきます。その過程でプランが練られ、熟成されていくのではないでしょうか。

その点は陶芸と似ているかもしれません。粘土を徹底的に練って菊練りして形を作り焼きますが、必ずしもうまく焼けるとは限りません。(まだやった事はありませんが、、、)


次回ももう少し新規事業に関して考察してみたいと思います。